第4回 担保不動産収益執行制度
担保不動産収益執行制度とは
不動産の管理を継続しつつ、その収益を被担保債権にあてるための制度である。
改正の背景
バブル崩壊によって不動産の担保価値が下がり、該当物件を売っても借金が返せないケースが増えた。 そこで、不動産価値の代わりとして債権者がその賃料を得られる『担保不動産収益執行制度』が制定され、平成16年4月1日に施行された。
当制度開設前から、不動産の賃料等を担保の代替物とする方法(物上代位による差押 民法304条および372条)や、強制管理する方法(民事執行法93条等)があった。
しかし、民法304条、372条では、賃料の全てを担保権者が得ることができてしまい、その結果、管理費用の捻出ができなくなり、不動産が荒廃する原因にもなった。 また、管理人もいないため、新たな賃貸借契約や賃貸借の解除ができない不都合があった。
強制管理の方法は、一般債権者が行う制度のため、債務名義を得る必要があり、担保権者は強制管理の中で優先弁済を受けることができなかった。
改正の主な内容
担保権者は該当の担保物件に対して、従来の方法と、担保不動産収益執行制度を選択できる。
担保権者が担保不動産収益執行制度を選択した場合、下記のようになる。
- 裁判所は管理人を選任する。
- 管理人は不動産の管理や賃貸借の契約などを行う。
- 賃料による収益のうち一部が管理費用に使用され、残りを債権者が得ることになる。
- 担保不動産収益執行手続きの最中に担保権を実行し、競売することも可能である。 このため、担保権者は気兼ねなく担保不動産収益執行制度を選択できる。
借り手のメリット
担保不動産収益執行制度はもともと担保権者のための制度だが、 これにより借り手にも下記のメリットが生まれる。
建物の改修
一般に賃貸物件での建物の改修は大家側で行うことになっているが、これまでの制度では改修費用がうまく捻出されないケースが生じていた。
担保不動産収益執行制度の元では、通常の物件と同様に改修が行われることになる。
物件を探すチャンスの増加
これまでの制度と異なりきちんと管理人が置かれるため、新規賃貸契約や賃貸契約の解除が滞りなくできるようになる。
このため、借り手からすると物件を探すチャンスが広がるといえる。